
スクワットの有効性
『スクワット』は、あらゆるトレーニング種目の中で最も重要でありながら、長きにわたって最も正しく理解されていない種目です。筋力、パワー、筋量を伸ばすためにできることの中で、可動域をいっぱいに使ったこの種目は、最も有効で価値のある種目です。
フルスクワットが安全性においても筋力強化においても推奨の下半身トレーニングです。
(正しく行えば、膝を痛めるリスクも少なく、他のどんなトレーニングよりも膝の安定性を高めることができる)
本書で推奨しているのは
ロウバースクワット
バーベルを肩付近ではなく、肩甲骨の方に下方に低い位置で担ぐスクワット
バーベルを担ぐ位置が低くなるほど背中を傾倒させることができるようになる。(つまり背中でバーベルを安定させられる最も低い位置で担ぎたい)
スクワットの動作に関与し得るすべての筋肉を最大限に動員(ポステリアルチェーンの筋群)し鍛えたい時、筋力、パワーが出せるスクワットの方法は「ロウバースクワット」です
スクワットを正しく行えば、ポステリアルチェーン全体を動員し、漸進的に向上しながら鍛えることができます。
バーベルスクワットが現存する中で最高のトレーニング種目です。
ロウバースクワットの方がハイバースクワットより多くの筋肉を動員して、より大きな重量をあげることができる。
フォーム
足の位置
1、かかとを肩幅に開いて、(足幅が広すぎても、狭すぎても適切な深さまでしゃがむことができなくなる)
つま先を約30度外に広げ
太ももは足と同じ角度になるように膝を外に向けた状態で体を落としていく
(そうすると、内転筋群を収縮させて力を出せるようになります)
(よく行われているハイバースクワット(背中の上の方にある僧帽筋に載せる)はバーベルを載せる場所として自然に思えますが、バーベルを高い位置に担ぐと、バーベルを足の中心の上に維持するためには背中の角度はより立った状態になります。背中の角度が立つと、股関節を開いたときに膝は前に出て、膝の角度は閉じることになります。いいかえればフロントスクワットの動きに近くなり、これは全身のパワーの源であるポステリアルチェーンを効果できに鍛えられないので、全般的な筋力強化には向きません)
スクワットの深さ
スクワットでは深さが非常に重要です。
フルスクワットで!
正しいスクワットとは、深く、股関節が膝蓋骨(お皿)の上端よりも低い位置までしゃがみ込みます。(つまり、正しいスクワットは可動域全体を使う)
浅いスクワットでは大腿四頭筋ばかりが使われハムストリングスなどのバランスが取れない
ハムストリングはフルスクワットで鍛えることができ、フルスクワットの動作の中でハムストリングが力を出すことで膝を守っており、またハムストリングが鍛えられると前十字靱帯を守ることができます。
浅いスクワットで重量を伸ばすことは、意味のない数字遊び
パラレル以下の深さでスクワットできない重量なら、背中に担ぐべきではない。
正しいフルスクワットには、他のトレーニング種目には決して真似のできない効果があります。
・中枢神経の活動が大きい
・身体のバランスと連携が向上する
・骨格への加重とそれによる骨密度の向上
・筋肉への刺激とそれによる成長
・結合組織への負荷とそれによる強化
・メンタル面のキツさとタフさ
・身体全体のコンディショニング
正しいスクワットのボトム位置を覚える
スクワットのフォームを覚える上で最も重要な部分
まずはバーベルなしで正しいフォームを取れるようになると、バーベルを担いで同じ姿勢を取るのは簡単になります。
正しい足の位置を確認し、途中で止まることなくしゃがみ込みます。
次に、手のひらを合わせ、肘を膝にあてて外に押し出します。
これで多くの人は正しいボトム姿勢が作れます。
・足は完全に地面につける
・太ももと足と同じ角度(約30度)に揃える
・股関節を後ろに引き
・膝はつま先のほんの少し先に出る
・背中はできるだけまっすぐに伸ばす
・背中は約45度で前傾する
(この角度でバーベルを担ぐと、足の中心の真上いバーベルがくるようになる)
・視線は自分の1.2m〜1.5mほど前の地面を見つめる
すでに話したように、スクワットでは深さが非常に重要で、今後正しい深さでスクワットをできるようになるために、このボトム姿勢が要になります。
立ち上がって、もう一度ボトム姿勢に戻りを繰り返し、ボトム姿勢を身体で覚えていくようにしましょう。
正しいスクワットを覚える上でこのボトム姿勢が最も重要な部分です。
立ち上がる
この正しいボトム姿勢が作れたら、次は立ち上がります。
立ち上がる時は、お尻をまっすぐ上に押し上げます。(前に動かすのではない)
そうすることで体重がつま先に集中することなく、足の裏全体に体重をかけることができます。
お尻に鎖が付いていて、ボトム位置からまっすぐに上に引っ張り上げられるようなイメージです。
足で地面を押すという意識を持つとうまくすべての筋肉が使われません。ボトム位置からお尻を押し上げるという意識を持つと、神経系にとってシンプルで効率的な指令になり、ヒップドライブを使うのに適切な運動単位を発火させることができます。
顔の位置と視線
ヒップドライブには目線の方向が影響する。
天井を見上げると、適切なテクニックを用いてスクワットを行うのに数多くの悪影響を及ぼします。(いまだにそのようにアドバイスしている指導者もいるが、、、)
見上げることが癖付いてしまうと非常に難しい問題になる。
実際にやってみると力が入りにくくなることが実感できるだろう。
視線を自分の1.2m〜1.5mほど前の地面の一点に視線を固定する。
鏡を見ながらスクワットをするのは、とにかくやめた方がいい。前から見た情報はほとんど役に立たない。
視線を下に向けると、ほとんどの人は首の角度が変わるほど頭を上げなくなる。
アゴを引いた首の姿勢はテニスボールを使って確認する方法もある。
バーの位置
肩甲棘の真下。(肩の裏側に手を回すと触ることのできる肩甲骨の出っ張った部分)
バーの持ち方
バーベルを握るときは、親指はバーベルの上に置き、肘を少し上げる。こうしてバーベルを背中に手で押さえ込むように。(バーベルの上に手がある)手で重量を少し担いでいる状態ではなく、完全に背中に載っている状態。
手幅は一般的に81cmマークの内側に収まることが多い。
柔軟性は必要ですが、手幅を狭くして肘を後ろに上げると、肩の後ろ側の筋肉を使ってバーベルを安定させやすくなります。
呼吸:重要
過去何百年という歴史の中で、我々の祖先は重たいものを押すときに呼吸をどうすればいいかを中枢神経に覚え込ませてきました。
高重量を扱うときには、大きく息を吸って止めること。
高重量を挙げるときに息を吐くと、脊柱を安定させるのに十分な圧力を生み出せなくなる。
バルサルバ法:腹部と胸部の筋群から圧がかかる中、声門を閉じて息を止めることの名称。
バーベルを挙げたり自動車を押したりするときにバルサルバ法を用いるのは、身体の前面の胸部や腹部から圧力を得て脊柱を安定させるためで、これは自然なことです。
血管を開いた状態を維持して、脳への血流を確保し意識を保つことができる。
強く押す最中に自然と唸り声が出るのは、声門で気道が大きく狭められた状態で声が出るものです。気道が狭くなって、少しずつ息を吐いている状態でも圧力は上がります。格闘技などの掛け声は突きの瞬間に声を出すことによって、パワーをより一点に集中させやすくするというものです。
大きく吸い込んだ息を止めると胸腔の圧力が高まり、この圧力は腹直筋と腹斜筋が引き締まることでさらに高まります。こうして脊柱は硬いシリンダーに包まれるような形で支えられるのです。リフティングベルトはこの効果を高める働きをします。
よく言われている「×ウエイトを下ろしながら息を吸い、ウエイトを上げながら息を吐く」というアドバイスに従うと、脳卒中のリスクを下げるよりも、整形外科関連の傷害リスクを高めることは明白です。
実際には高重量を扱うセットでは、レップごとに大きく息を吸い込んで息を止めるのが良いのです。高重量を扱うときに確実に行えるように、軽い重量でもこうやって正しい呼吸をする癖をつけましょう。
バルサルバ法によって起こるかもしれない問題よりも、防ぐことができる問題の方がはるかに多く、ウエイトルームで安全を確保するのに必要で重要なテクニックなのです。
ベルト
ベルトを適切に使うと安全性を高める道具として役立ちます。
ベルトを使うと筋肉から脊柱にかけられる圧力を高めることができ、脊柱を守ることにつながります。
腹部の筋肉が作る「シリンダー」をベルトが強化する働きをするのです。
スクワットの安全性と効果を高めるためには、脊柱にかかる圧力を高めることが必要になる。
ベルトは身体の感覚にフィードバックを送り、腹部の筋肉をより強く収縮させ脊柱への圧力を高める。ベルトが容積を制限することで、その抵抗に対して押し返すことで腹部の筋肉がより強く収縮し、胸腔と腹腔内の圧力が高まる。
ベルトの種類
さまざまな種類のものがあるが、役に立つのは端から端まで幅の同じベルト。背中側の幅が広いベルトは、製造者がベルトの機能を理解していない。