こんにちは、環境デザイン研究所です。
今回のテーマは『私たちは子供に何ができるのか』
その答えの1つとして
子供にとっての一生の財産となる「非認知能力」を育むことが大切と考えられるようになってきました。
『非認知能力』とは?:
IQテストや学力テストでは測ることのできない、子供がより良い人生を歩む上で必要な「やり抜く力(グリッド)、好奇心、自制心、レジリエンス(しなやかな強さ)、楽観的なものの見方、誠実さ」といった数値では測れない気質。
それが大切であることが知られてきた。
そうですよね、皆さんも
テストや学力では測れない何か大切なものがあるとお気づきではないでしょうか?
「どのように子供と接すれば子供がよりよく成長していけるか?」そんな問いに答えることができれば幸いです。
これから紹介する本は:

『私たちは子供に何ができるのか』ー非認知能力を育み、格差に挑むー
ポール・タフ著 出版:2017年
著者の意見や思想ではなく、科学的根拠や調査結果(データ)に基づいたもの。
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ー格差に挑むーと表題にあるように、特に逆境=貧困の中で育つ子供の成長に焦点を当てた内容にはなっていますが役立つことも多くあるのではないかと思います。
日本ではまだ、極端な貧困にさらされる子供は少ないと思いますが、これから格差社会となり増加するかもしれません。
筆者紹介

アメリカの編集者・記者を経て、現在フリーのジャーナリスト。子供の貧困と教育政策を専門に多数の執筆・講演活動を行う。
2013年出版「成功する子、失敗する子」があります。
重要だと思いましたので丁寧に解説するために、前後半に分けたいと思います。
流れはこのようになります。(目次)3歳児(乳児期)まで と 就学時期 に分けます。
それでは参ります
人生を変える〜習慣の科学〜_05[未来への投資]ー前編ー幼児期編
イントロダクション
非認知能力は、読み書き計算のように教えて身に付くものではない。「環境」の産物なのだ。
(前書きより:駒崎弘樹 フローレンス代表理事)
調査によると日本の子供の貧困率は14%、その7人に1人の子供が貧困ライン以下の生活をしている
近年、「非認知能力」の育成に高い関心が集まっている。子供がより良い人生を歩む上で、これまで重視されてきたIQや学力などの「認知能力」よりも影響力が大きいことが、明かになりつつあるからだ。
『非認知能力』とはひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲などを指す。心のOS(オペレーティングシステム)と言っても良いかもしれない。
ヘックマンの研究:就学前に良質な保育・教育を受けた子供は「非認知能力」の育成、その後の人生にも決定的に重要な意味を持つことがわかった。
非認知能力に焦点を当てた早期教育の投資対効果は13倍というデータもある。一方で、子供の貧困は、一生の財産になる非認知能力を獲得する機会を奪い取ってしまう。→大人になった後に仕事や生活面でより多くの機会を失う可能性が高い。→結果として自身も貧困に陥ってしまう。→これが、貧困の連鎖を生むのだ。
私見:日本ではまだ、極端な貧困にさらされる子供は少ないと思いますが、これから格差社会となり増加するかもしれません。また世界への子供へ視野を広げて見ていきたいと思います。
(私見)疑問:早期教育が鍵となるのか?それ以降でも伸ばせるのか?
ではどうしたら良いのか?その答えへの扉が、本書の中にある。子供の貧困率が日本の4倍近い50%という状況にあるアメリカ。では長年にわたって様々な取り組みがなされている。そこから得られた最新の知見が本書にある。是非読んでいただきたい。このままだと日本もアメリカの状況のようになる
貧困問題の意識調査データで日本は「貧困は自己責任」的な貧困に冷たい国となってしまっている。→自己責任なんて持ちようのない子供たちの間に貧困が広がることの、放置につながる。
日本をアメリカのような貧困が蔓延する状況にしてはいけない。そのためにも本書は読まれねばならない。そして行動しなければならない。(自分:より良い未来のために)
私見:逆境に育つ子供というのは、貧困によって特に親の愛情を十分に受けられなかった子供だと思う。例え家庭が貧乏に見えても十分な愛情を受けていればその子は伸びていく。
私見:私たち大人が子供たちにどのように接すれば「伸びていく子供」に育ってくれるのかという視点で見ていきたいと思います。
1、アメリカの現状ー逆境(貧困)
2013年アメリカ合衆国の公立学校に通う生徒の中で「低所得層」に相当する割合が51%に達した。(学校の昼食代の補助を受ける資格がある)
富裕層と低所得者の生徒の格差は大きくなっている。学力面、大学進学適性検査、大学進学率、→(貧困の連鎖へ)
では、『豊さの中で育った子供にあって、貧さの中で育った子供にないものはなんなのか?』私が10年以上にわたって答えを出そうとしている問いである。
「成功する子 失敗する子」で特に焦点を合わせたのが「非認知スキル」(ソフトスキル)と呼ばれる一群の要素:粘り強さ、自制心、楽観主義などーが貧しい子供たちが困難を乗り越えて成功するためにこうした気質「性格の強み」が決定的に重要になると今や多くの人の間で注目され、信じられている。
この確信を支える科学的根拠(エビデンス)は、過酷な、あるいは不安定な環境が成長過程にある幼少期の子供たちの脳や体に生物学的な変化をもたらすことが、最新の調査で示されたのだ。そうした変化は、思考や感情を制御する能力の発達を損なう。
1000人の子供の追跡調査では、非認知能力が高い子供の方が、学歴が高く、健康状態が良く、離婚の可能性が低く、借金を抱ええたり、刑務所に入ったりする可能性も低い。
「非認知能力が重要」と分かった、それを伸ばす最善の方法については結論は出ていない。
本書では「非認知スキル」が重要な要素であることは分かったが「それで、結局どうすればいいのですか?」という質問に答えようとするひとつの試みである。現場と政策立案者の双方に実践的なガイドを提供することを目的としている。
2、戦略 ー本書のアプローチ
役だつ情報:成功例のそれぞれの核となる原理を抽出して解説し、共通点を見つけることが本書の目的である
とりわけ逆境の中で育つ子供たちの発達を、ひとつの連続体として、生まれてから高校卒業までを分断しないひとつの物語として考えていく。
この本の紹介は私のフィルターをとおしたスキミング(拾い読み)が入っていますので、あなたも是非、この良書を手にとってみてください。

『私たちは子供に何ができるのか』ー非認知能力を育み、格差に挑むー
ポール・タフ著 出版:2017年
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3、スキル ースキルというより環境
『非認知スキル』=やり抜く力(グリッド)、好奇心、自制心、レジリエンス、楽観的なものの見方、誠実さといった数値では測れない気質。
その価値が広く知られるにつれ、カリキュラムや教科書や指導法にこれらのスキルを伸ばすためのガイドが求められるようになった。しかしながら実践はそう簡単ではない。ある矛盾:それらを引き出せることのできる名教育者は、こうした「スキル」の話をすることはないのである。
チェスの名コーチ:エリザベスの生徒は「チームへの帰属意識」「目標を高く持つこと」「自信を持つこと」が備わっていた。しかし、コーチはそうした言葉は使わない。激励したり、モチベーションを高めるようなスピーチをしたりすることもほとんどなかった。生徒たちの試合を彼らと一緒に熱心に分析し、彼らがおかしたミスについて繊細まで率直に話して、どうしたら良かったかを理解させるのだった。彼らのチェス能力だけでなく、生活全般への取り組みまで変えたのだ。
数学を教えるのと同じ方法で「気質」を教えることはできない。そもそも訓練や練習の結果として身につくものではない?(私見:私は、のちにも身につくものだと思うが、成功体験など)
私の至った結論はこうだ「非認知能力は教えることのできるスキル」と考えるよりも『非認知能力は子供をとりまく環境の産物である』と考えた方がより正確であり、有益でもある。
これが子供の乳幼児期に当てはまることには、有力な科学的根拠(エビデンス)がある。また、中学や高校でも、非認知能力は、おもに彼らの属する学校を中心とした環境の産物なのだ。
子供たちのやり抜く力やレジリエンスや自制心を高めたいと思うなら、最初に働きかけるべき場所は、子供自身ではない。環境なのだ。
4、ストレス ー有害ストレスの悪影響
成功に必要な能力を伸ばすことを阻害している要因
1、健康:食事面。栄養価の高い食事が取れていない
2、幼い頃の知的刺激の少なさ:裕福な親は子供たちが幼い頃から本や教育玩具をたっぷり与え、よい図書館や博物館など文化施設のある地域に住んでいる。変化に富んだ語彙で幼い子供に話しかける。
しかし、他の要因も研究によって見えてきた。結論によれば、環境による影響の中で子供の発達を最も左右するのは、ストレスなのだ。貧困による不健全な圧迫は子供の心と体の健全な発達を阻害する度合いは大きい。
逆境(貧困)は、とくに幼い時期ほど、体内の複雑なストレス反応のネットワークー(脳と免疫システムと内分泌システム)を結ぶネットワークーの発達に強い影響を及ぼす。とくにこの時期にネットワークが環境からの信号に俊敏に反応するのは、これから先の長い人生において何に備えるべきか、体に知らせる信号を常に探している。この先の人生が困難であると感じれば、トラブルに備えるための反応をする。
幼い時期に経験する【高レベルなストレス】:慢性ストレス=(有害ストレス)
生理的:免疫の低下、代謝の変化(太りやすく)、喘息、心臓病、脳の発達の阻害、知的機能をつかさどる最も繊細な部位を阻害し、感情面や認知面での制御能力が育つのを妨げる。
感情面:失望や怒りをおさえられない。ケンカ、わがまま、口ごたえ、大人からの手を阻む。
認知面:前頭前皮質が制御する、実行機能という能力の発達が阻害される。これは高次の知的能力ー作業記憶、自己調整、認識の柔軟性などーこれが発達のための神経系の基盤となり、粘り強さやレジリエンスといった非認知能力の支えとなる。
5、親の存在
この時期のいちばんの問題となる環境要因は、居住する建物ではなく、子供たちが経験する人間関係なのだ。子供が感情面、精神面、認知面で発達するための最初にして、きわめて重要な環境は家族だ。
ごく幼い頃から、子供は親の反応によって世界を理解しようとする。
親が果たす決定的な役割
・「サーブとリターン」親と乳児の何気ないやりとり
・そして親は子供たちが受ける圧力の外部調整装置となります(子供が動揺している時、親が厳しい態度→強い感情をうまく処理できない、緊張の高い状態に効果的に対応できない)反対に子供が瞬間的なストレスに対処するのを助け、怯えたり癇癪を起こしたりしたあとに落ち着きを取り戻すのを手伝うことのできる親は、その後の子供のストレス対処能力に大いにプラスの影響を与える。
・乳幼児期には泣きわめいたり感情を爆発させたりすることも多いものだが、子供はそのつど何かを学ぶ。子供のもつれた感情を敏感に、注意深く反応するなら(温かく繊細な対応、なだめるような行動)、子供はひどく不快な感情にもうまく対処できるようになる。これは子供の心に深く刻まれ、次にストレスに満ちた状況になったとき、あるいは先々さまざまな危機に直面したときに、進化を発揮する。
とくに子供がストレスを受けている局面での親のケアがホルモンなどの脳からの分泌物だけでなく、遺伝子発現に関わる部分でも子供の発達に影響を与える。(海馬、成長したときにストレスホルモンを処理する部位)
この本の紹介は私のフィルターをとおしたスキミング(拾い読み)が入っていますので、あなたも是非、この良書を手にとってみてください。

『私たちは子供に何ができるのか』ー非認知能力を育み、格差に挑むー
ポール・タフ著 出版:2017年
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6、心的外傷 ートラウマ
「深刻な機能不全に陥った家庭」で育った
DV(親密な関係にあるものから振るわれる暴力)を目撃した。両親が離婚した。家族の中に精神疾患、アルコール・薬物依存の問題を抱える者、受刑者がいたなど。
トラウマを経験した子供は、学校生活で学習や行動上の問題を抱えがちである。
家庭環境の重度な崩壊が子供の発達に有害な影響を与える。
7、世話人の反応の欠如 ーネグレクト
(両親の間の暴力を伴わない口論も脳の発達にマイナスの影響)
親が子供にあまり反応しない。積極的に関心を寄せたり、きちんと向き合ってやりとりをしたりといったことがない状態。
子供の健康的な発達を最も深刻に脅かすのが「ネグレクト」、親や世話人からの反応の欠如による。とくに乳児の時ネグレクトを受けると、神経システムがそれを深刻な脅威として受け止める。過度なネグネクトは法律により虐待である。
ロシアの孤児院で、心のこもった世話をするように教育したところ、子供たちと孤児院内の雰囲気を大きくかえた。(親のような)温かいやりとりで9ヶ月後には認知能力や社会性の発達、運動技能に相当の伸びが見られた。変わったのは物理的環境ではない。変わったのは、まわりの大人の接し方。
だからもし目の前の恵まれない幼い子供たちの人生を変えたいと思うなら、子供たちが日々接する大人の行動や態度を改善することなのだ。
8、幼児期の介入(支援)
6歳未満の幼い時期、もっと言えば3歳未満の時期こそが、子供の発達を促す絶好のチャンスでもあり、危機が潜む期間でもあるのだ。
これには確固たるエビデンスがある。ごく幼い時期の子供の脳はもっとも柔らかく、他のどの時期よりも環境からの影響を受けやすい。のちに様々な能力を支えることになる神経系の基盤が形成の途上にあるからだ。
基盤が関わる能力には、読み書き計算や比較、推測を扱う知的能力だけでなく、学校の内外で生きていくための心の習慣や力、ものの見方まで含まれる。幼い頃に環境から受けた影響は増幅される。この時期の脳の発達については科学的理解が進んでいる。しかし支援は進んでいない。
政策、幼児期の子供のための支出の大半が、3〜5歳のために使われている。0〜2歳の子供のために使われる割合は6%
いまや、のちの成功に影響を及ぼす脳の発達は、人生の最初の3年間に起こるとはっきりわかっている。
研究者らが最近になって結論付けたところによれば、ーーひとつの活動に集中する能力、指示を理解しそれに従う能力、失望や不安と折り合いをつける能力、他の生徒とうまく付き合う能力ーー。その後の学校生活でも、非常に重要になる。やはりこの時期の環境の中心となるのは、親やまわりにいる大人たちだ。子供への語りかけ、やりとり、テレビをどれくらい見せるか、親の行動のプライベートな部分。そこに政策が介入するのは難しい。
ナレーション
はい、今回は以上です。
私なりのまとめ:乳幼児期(0〜3歳)の子供にどのように接すればよいか
・幼児期は子供にとって発達の基盤を作る、本当に大事な時期であると理解すること。
・ストレスを与えないこと、それは神経システムがそれを深刻な脅威として受け止てしまい、のちに様々な能力を支えることになる神経系の基盤の発達を阻害してしまうから ➡️食事面、おしっこなどの処理、反応・対応など
・心のこもった世話、子供への反応、積極的な関心、きちんと向き合う、語りかけ、温かいやりとり、テレビをどれくらい見せるか、親と乳児の何気ないやりとりが大事。
・感情を爆発させたりする時:落ち着きを取り戻すのを手伝う、子供がストレスを受けている局面での親のケア。温かく繊細な対応、なだめるような行動
この本の紹介は私のフィルターをとおしたスキミング(拾い読み)が入っていますので、あなたも是非、この良書を手にとってみてください。

『私たちは子供に何ができるのか』ー非認知能力を育み、格差に挑むー
ポール・タフ著 出版:2017年
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それではまた、次回は「就学期」です。お楽しみに。最後まで見ていただきありがとうございました。
人生を変える〜習慣の科学〜_05[未来への投資]ー後半ー就学期編
9、アタッチメント(愛着)
10、(家庭への介入)
11、家庭を超えて
12、学習のための積木
13、規律
14、インセンティブ(賞罰による刺激)
15、モチベーション(動機)
16、評価(どのように評価するか)
17、メッセージ
18、マインドセット
19、人間関係
20、学習指導
21、課題
22、より深い学習
23、解決策
この本の紹介は私のフィルターをとおしたスキミング(拾い読み)が入っていますので、あなたも是非、この良書を手にとってみてください。

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ポール・タフ著 出版:2017年
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